研究内容


SMC複合体による染色体構造形成機構

 私たちは、生命の設計図であるDNAがどのようにして細胞に収納され、細胞分裂を経て次世代に受け継がれるのか、についての分子機構に興味を持って研究を行っています。

 

 ゲノムDNAは非常に長大なポリマーで、ヒトの細胞では全長2mにも及びます。DNAは様々なタンパク質が結合・作用することにより染色体という高次複合体を形成することで、直径µmオーダーの細胞核に折り畳まれています。染色体の形成異常や分配のエラーは、異常な染色体数の細胞を生み出し、細胞死、がん化や不妊等と関連する欠陥につながります。私たちは、DNAを操る機能タンパク質を細胞から精製し、その働きや動態を試験管の中で再現することによって、種々の染色体構造を形成する分子メカニズムを解析しています。

 

 特に着目しているのは、SMC複合体と総称されるリング構造のタンパク質複合体です。SMC複合体は生物間で広く保存されたATPaseで、リング構造を利用してDNAを束ねることで、染色体構造形成に機能すると考えられています。これまでに、姉妹染色分体間接着を形成するコヒーシン複合体について機能なDNA結合反応を再構成し、接着形成の分子機構の一端を明らかにしてきました。再構成実験は、個々の機能タンパク質の反応を直接解析できる点において、遺伝学や細胞生物学的手法では困難な分子機構の解明に大きなアドバンテージがあります。現在、この再構成系をベースに1分子イメージングを組み合わせ、SMC複合体が形成するDNA構造を分子レベルで可視化することにも取り組んでいます。

 


SMCタンパク質の精製

試験管内再構成系

分子レベルでの解析





〒411-8540

静岡県三島市谷田1111

国立遺伝学研究所

研究実験棟西棟C218室

遺伝メカニズム研究系

染色体生化学研究室

村山研究室